賞味期限が切れた非常食、棚の奥から出てきませんか
片付けの途中で、棚の奥からパッケージの端がへこんだ乾パンの缶が出てくる。裏返すと賞味期限は去年の春。捨てるのはもったいないけれど、食べる気にもなれません。そんな場面に心当たりのある方は多いでしょう。
防災用に買った非常食は、買った時点で安心してしまい、そのまま存在を忘れがちです。かといって、いざという時に期限切れで食べられなかったり、口に合わず残してしまったりするのは避けたいところですよね。
その悩みを「普段の食事の延長」で解決するのが、ローリングストックです。普段食べるものを少し多めに買っておき、食べたら買い足す。それだけで、備蓄は常に新しい状態に保たれます。
考え方は簡単でも、「どれくらいの量を」「どこに置いて」「いつ買い足すか」で手が止まる方も少なくありません。まずは、棚の中にある食べ慣れたレトルトや缶詰、パスタを数えてみましょう。それが備蓄の第一歩になります。
ローリングストックの基本と、一人暮らしに必要な量
ローリングストックとは、普段食べるものを少し多めに買い、食べた分だけ買い足していく備蓄方法です。非常食を「特別なもの」として買い込むのではなく、食料品の在庫を一段厚くしておくイメージです。
古いものから食べ、新しいものを後ろに足していくので、賞味期限切れで捨てる事態が起きにくくなります。食べ慣れた味ですから、非常時に食事が喉を通らない、という事態も避けやすいのが利点です。
量の目安は最低3日分、できれば1週間分
農林水産省は、家庭での食品備蓄について、最低3日分、できれば1週間分を目安にするよう呼びかけています。飲料水は1人1日3リットルが目安です(出典: 農林水産省「災害時に備えた食品ストックガイド」(2019年))。
一人暮らしなら計算は単純です。3日分は水9リットルと食事9食、1週間分なら水21リットルと食事21食になります。僕は、まず3日分を完成させ、1週間分は後回しにすると決めています。最初から21食を確保しようとすると、置き場所の確保で手が止まってしまうからです。
9食分の中身を決める
9食分は、次の4つの枠に分けて考えると決めやすくなります。
- 主食: 乾麺やパスタ、常温で保存できるご飯など
- おかず: レトルトカレーや丼の素、サバ缶やツナ缶
- 汁物・野菜: フリーズドライのスープ、野菜ジュース、コーン缶などの缶詰
- 飲み物: 普段飲んでいる水やお茶のペットボトル
主食とおかずを組み合わせて1食と数えれば、必要なのは主食9食分とおかず9食分を揃えることだけです。選ぶ基準はひとつ。普段の食事ですでに食べ慣れているものだけを入れます。食べ慣れないものは、回す前提のストックには向きません。
ローリングストックでやらないこと3つ
定番の方法をひととおり実践しようとすると、仕事で疲れた平日の夜に真っ先に止まります。そこで、やらないと決めたことを先に挙げます。
専用の「非常食コーナー」は作らない
防災用の箱や棚を別に用意すると、普段の台所から切り離され、ローリングストックは回らなくなります。「非常用だから手を付けない」という意識が働くからです。パスタやレトルトと同じ棚に、同じ並びで入れておくのが一番でしょう。

期限の管理表やアプリは作らない
在庫を表やアプリで管理する方法もよく紹介されますが、続きません。食べるたびに更新作業が発生するからです。パスタを茹でてから在庫表を開く人は、まずいないでしょう。
代わりに、袋や箱に賞味期限を直接書き、期限が近いものを手前に置きます。見ればわかる状態にしておけば、表を更新する作業そのものが要りません。具体的な手順は後半で説明します。
「いかにも非常食」な非常食は買わない
乾パンや缶入りパンなど、いかにも非常食という商品は、普段の食事で食べる機会がありません。回す前提の備蓄には向かず、結局、期限切れまで棚に残りがちです。
ローリングストックの対象は、普段から食べるものだけです。5年保存などの長期保存食を「回さない枠」として少量だけ別に持つのも一つの選択肢ですが、僕は買っていません。普段食べるもので3日分を作るほうが、管理する物が一種類で済むからです。保存水も同じ理由で買わず、水は普段飲むもので回します。

何をストックする?食品を手間・費用・失敗しにくさで比較
ストックする食品は、手間・費用・失敗しにくさで比べると選びやすくなります。ここでの失敗しにくさとは、電気やガス、水が使えなくても食べられるかどうかです。
| 種類 | 手間 | 費用 | 失敗しにくさ |
|---|---|---|---|
| レトルト食品(カレー・丼の素) | 温めるだけ(そのままでも食べられる) | ふつう | 高い |
| 缶詰(サバ缶・ツナ缶・コーン缶) | 開けるだけ | 安め | 高い |
| 乾麺・パスタ | 湯を沸かす必要あり | 安め | 火と水が前提のため低め |
| フリーズドライの汁物 | お湯か水を注ぐ | やや高め | 食べ慣れていれば高い |
| カップ麺 | お湯を注ぐ | 安め | 湯が必要で水も多く使うため低め |
条件別の選び方
- 費用を抑えたい、置き場所が少ない場合は、缶詰と乾麺を中心にします
- 停電やガス停止でも食べられる状態を優先するなら、缶詰とレトルトを中心にします
- 食べ慣れた味を優先するなら、普段食べているレトルトや缶詰を選びます
僕は、そのまま食べられるものを最低3食分は必ず入れ、残りを乾麺やレトルトなど、火と水を使うもので埋めます。ガスが止まっても湯を沸かせるよう、カセットコンロとカセットボンベも一緒に用意しておくと安心です。ボンベは鍋の日に使えば、無理なく回せます。

主食の枠は、常温保存できるご飯や乾麺で埋めます。飲み物は、普段飲んでいる水やお茶の2リットルボトルを、3日分の水9リットル、つまり5本ほど多めに置きます。ラベルの期限が近い順に飲み、1本空けたら1本買い足せば、保存水を買わなくても同じ仕組みで回せます。
続けるための仕組み:置き場所・買い足し・期限を固定する
ローリングストックが止まる原因は、たいてい量ではなく、置き場所と買い足しのタイミングが決まっていないことです。そこで、3つを固定します。
置き場所は、手前ですぐ取れる場所だけ
背の高い棚の奥や床に近い低い場所に押し込むと、取り出すのが面倒になって存在を忘れます。置くなら、扉を開けてすぐ手が届く、腰から目の高さの棚です。奥行きのある棚なら、手前の一列だけを使います。

3日分が手前一列に収まらないときは、1週間分を目指すのをやめて、3日分に絞ります。取り出せない備蓄は、持っていないのと同じだからです。
水とボンベは、食料と少し違う扱いにしています。2リットルのボトル5本は重く、腰から目の高さの棚には載せられません。そこで水だけは手前一列ルールの例外にして、床に近い段の、扉を開けてすぐ手が届く位置に1列で並べます。奥に積み上げないのが条件です。ボンベは食料と同じ棚の手前に置き、鍋の日に1本使い切ったら1本買い足して、常に予備が2本ある状態を基準にしています。3日分の湯沸かしなら、これで足りると考えているからです。
買い足しは、食べたその日にメモする
買い足しは、思い出そうとすると必ず忘れます。食べた瞬間に記録し、次の買い物で同じものを買う。この流れに固定しましょう。
- 備蓄の食品を食べたら、その場でスマホのメモか買い物リストに商品名を書きます
- 次の買い物で、同じ商品をカゴに入れます
- 買ってきたら、油性ペンで賞味期限の年月を袋や箱の目立つ面に書きます
- 古いものを手前、新しいものをその後ろに並べます
これで、在庫表を作らなくても、棚を開けた瞬間に期限の近いものが目に入ります。
賞味期限が近づいたら、普段の夕食に混ぜて先に食べる
期限が近づいたものは、レトルトカレーに冷凍野菜を足して1食にする、サバ缶をご飯のおかずにする、といった形で普段の夕食に混ぜると決めておけば、無理なく消化できます。特別な日を用意する必要はありません。
さらに、年に1回、防災の日の9月1日に棚を開けて、手前一列の中身と期限だけ確認します。食べてみて口に合わなかったものは、次から買わないリストへ。口に合わないものを3日分のうちに残しておくと、いざという時に食事がつらくなるからです。
まとめ
ローリングストックの要点は、次の4つです。
- 量は最低3日分。一人暮らしなら水9リットルと食事9食から始めます
- 専用の非常食コーナー、在庫表、いかにも非常食な商品の3つは、作らず買いません
- ストックは、そのまま食べられる缶詰やレトルトを軸に、乾麺などを加えます
- 置き場所は手前、買い足しは食べた日にメモ、期限は袋に直接書く。この3点を固定します
特別な準備は要りません。次の買い物で、いつも買うレトルトか缶詰をひとつ多くカゴに入れ、帰ったら期限を書いて棚の手前に置いてください。それが、最初のローリングストックです。



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